【Cameraman and Editor's NOTE】19)恋愛要素

 
シナリオを見たとき、これはパフォーマンス界をめぐるアワーストーリーであるとともに青春映画である、と解釈しました。
青春ストーリーにつきものの恋愛要素についてどうするか、あまるさんに確認したことがあります。
その答えは書きませんが、その意向を反映させる雰囲気になっています。
美智子側については台詞で匂わせもあるのですが、寛側にはありません。そしてシナリオ上では最後まで回収されない部分でもあります。
それを個人的な趣味から、1カットで表現したのがこの場面です。
特に演出指示等はなく、こういうものを撮るということを伝えてすらいませんが、この微妙な距離感がいい感じ。普段からナチュラルな世界を作ってもらってたから撮れた、お気に入りのカットです。

f:id:kabetama:20201017105631j:plain

【Cameraman and Editor's NOTE】18)寺山修司

 
前回は撮影でももクロの「幕が上がる」の影響を受けた話を書きましたが、編集で一番意識したのは寺山修司の「田園に死す」です。
田園に死す」で寺山が目指していたのは演劇と映画、そして現実との融合ということになると思います。
その結末として、あの前衛的なラストになったわけでしょうし、本作の編集を通じてあそこに行きつくのはよく理解出来ました。
本作のネタバレにもなりますので、あまり詳しくは書きませんが、現実との融合という点で、少なくともあそVIVA!劇場での上映である限り、本作は寺山修司を越えた、と確信しています。
あんなはったりではありません。あそVIVA!劇場にはあそVIVA!劇場の、はったりを敬遠する空気があります。(だからこういう挑発的な投稿をするには抵抗もあるのですが)
それを体感できるのは残り10日で150人ほどです。
ハッキリ言って、ほかの環境で見て評価されたくはありません。オンラインやほかの環境での公開には反対したいですし、するなら昨日投稿した秒読みの場面でラストにするのがいいと思います。
私はこういう考えですので、完全版をご覧いただく機会も今回だけかもしれません。
予約フォームにある満席情報の記載から満席回が増えていますので、早めにご予約ください。

f:id:kabetama:20201017105543j:plain

【Cameraman and Editor's NOTE】17)青春映画

この作品は完全オリジナル、あそVIVA!劇場のための作品であって、他の劇場やオンラインで公開したところで、それはまったく別物になるだろうことは、ご覧いただいた方にはお分かりいただけると思います。
ただ、制作者として完全なオリジナルというものは存在するわけがありません。かならず作り出すものは、なにかの影響を受けて自分のものになっているはずです。
私が担当したうち、撮影パートで大きな影響を受けたものといえば、静岡でロケが行われたももクロの「幕が上がる」です。
それはこの場面を並べれば、よくわかっていただけると思います。同じ本番前の秒読みの場面です。

f:id:kabetama:20201017105232j:plain

f:id:kabetama:20201017105236j:plain



 
基本的には青春映画なのですよ、本作は。
だから、ひたむきさを感じとり、ひたむきさを持っていれば元気になれると感じる、ひたむきさを失っていたとしたら自分が年寄り臭いと感じてしまう、そういう批評は正鵠を射ているのです。

 

【Cameraman and Editor's NOTE】16)劇伴

劇伴という言葉という言葉にあまり馴染みがありませんでした。
初めて聞いたのは、あべの古書店の鈴木大治さんがやってる「言触」で音楽のことをそう呼んでる時だと思います。だからこの数年のこと。
本作に関してはアートモバイルさんが音楽で関わっていて、そういう表現をされていました。
私はブライダルのエンドロールムービーをつくっていて、曲に映像を合わせる、という感覚を持っています。
だから映像に音楽を合わせる、という発想がまったくありませんでした。
なので一部場面で、こっちはこっちで音楽の出来上がりを待っていて、向こうは向こうで映像の出来上がりを待っていて、というお見合い状態が発生していた模様です。
ご迷惑をおかけしました。
あまるさんからサンプル音源が送られて来ていたのですが、全然あってなくて大丈夫かと思ったものです。見事に合わせてもらって作品の深みとなりました。
序盤で保と良子のやり取りの中で
保「罪滅ぼしのつもりなんですから」
というセリフがあります。
これは後への伏線になっているのですが、セリフの流れの中で埋もれてしまうように感じていました。
だから、この場面をここで終わらせて印象付けましょう、という提案を何回かしました。
あまるさんからは、この後のやり取りをどうしても切れない、という判断で生かしになったのですが、最終的にはこのタイミングからBGMが乗ることで印象付けにつながった、という経緯がありました。
(最終的な完パケをまだ見てないのですが、たぶんそういうことになってると思います)
そういったところも含めて、個人的には後から音楽が乗る、という効果が大変印象的で得るものが多かった部分です。

【Cameraman and Editor's NOTE】15)映り込み

f:id:kabetama:20201017104939j:plain


 
昨日10月7日、あそviva劇場にて2度目の初号試写を行いました。
1度目は参加できなかったので、1度目の初号試写で言われたことについてよく分からなかったのですが、編集画面とスクリーン(映写機材)とは違うことが最大の原因です。
編集画面で許容範囲内のことが、スクリーンでは増幅されるため許容範囲を超えてきます。あと、スクリーンで初めて見えるものもあります。
写真の場面、カフェの棚のガラスに私、映り込んでますね。
ここはめっちさんのアドリブ全開にカメラが対応しきれませんでした。
リテイクなのでオリジナルテイクもあるのですが、圧倒的にこっちがいいので、映り込み承知で生かしとします。

【Cameraman and Editor's NOTE】14)シナリオにないカット


10月7日なのにまだやってるのか、という話もありますが、編集も大詰め、作業時間であと1時間程度でしょうか。
BGMも乗って、映画としての形をなしてきています。
もともと演劇的に始まったこの作品ですが、なんとか映画的な方向に傾けようとして、シナリオにないカットを提案したり独断で入れたりしている部分があります。
外部的にはネタバレになる部分もあります。本当は一度見ていただいてから解説でもしてみたかったのですが、二度見る機会もそうないでしょう。
なにより内輪に対して説明が完全には出来てませんので、その辺を含めて書いていきます。


①ラストカット
シナリオには明確になにをラストカットにするかの指示はありません。劇場内にいる全員の引き絵みたいなものを想定しているように読めます。
ラストの1カットの意味合いは、作品のファーストカットとの対比になっています。光が差し込んで始まり、光が消えて終わる、というシンメトリーを意図しています。

 


②曇り、雨、晴れ
寛の未来を先取りした表現です。サスペンスで人を殺そうと決意した瞬間に雷が落ちる的な、アレです。


③道路の白線を歩く
これはほんと個人的な思い入れで出演者全員に協力いただいたシーンです。
この世界では、登場人物がこれからやろうとしていることは違法合法の境目です。
その場所に向かう足が歩く位置が人物と場面によって違います。
広くて歩きやすい方が合法、狭くて歩きにくい方が違法を暗喩しています。

f:id:kabetama:20201017104304j:plain

 

【Cameraman and Editor's NOTE】12)ドン引き

 
ようやくクランクアップとなりました。
最終はこんな感じ。
シナリオだと、夜に田んぼに蛙が飛び込む、という感じになってたのですが、なにせそんな絵を簡単に撮れるわけがなく、夜の田んぼに石を投げ入れようかとも思ったりもしたのですが、それは迷惑行為ですから。
なので、その前の倉庫のシーンを夜にしてドン引きで撮れば、次のシーンが夜であることの説明にはなるでしょう、という企てです。
ちなみに、ドン引きとは本来的にはこういう画角のことを言います。
それが転じて心理的に引くことを表現する言葉になって広まったものです。

f:id:kabetama:20201017103814j:plain