【Cameraman and Editor's NOTE】8)演劇という結論

編集作業を進めながら考えるうちに、やはりこれは映画ではなく演劇なのだ、という結論に達しました。
映画と演劇との違いがどこにあるかというと、制作側と客席の信頼関係にあると思います。
たとえば山を見せるとき、演劇なら山で演じるのもありでしょうが、山の絵一枚を後ろに置くでもいいでしょう。
落語なら絵すら不要、むこう見て「大きな山やなあ」の一言で成立します。
この話は桂枝雀師匠のネタなんですがね。
その延長で言うと映画は、山に行って山を映さなければなりません。
なぜそうなるのかを枝雀師匠は、落語ではお客様との約束があるから、信頼関係があるから、と説明します。
映画ではお客様との信頼関係がないのですよ。
お客様は騙されないように映画を監視するのです。なぜなら、映像ほどお客様を騙しやすいものがないからです。
いい言葉で言えばリアリティーの追求ですけどね。
だからこそ普段、結婚式のエンドロールを作る際には、冒頭部分でお客様との信頼関係を築けるように気を遣っています。
この作品に関して言うと、演劇的に作られているため、お客様からの演劇的な信頼をいただくことが必要になってきますが、そこをどう解決していくか…
少なくとも映画映像的なアプローチは避けた方がいいように思います。